寡黙なダーリンの秘めた愛情
「私も由利亜もね、親には厳しく育てられて愛情を感じることなく育ったの」

ポツリと歩花が話始めたのを、美咲は遮らずに聞いていた。

「だから、男性に愛情を求めた。だけど素直になれないからうまくいかないことの繰り返し。そのうちに、お金を払えばある程度は受け入れてくれるホストクラブに嵌まっていった・・・」

お腹を擦る歩花は悲しそうに美咲を見つめ、

「若いというだけで、幼馴染みというだけで無条件に愛されるあなたが憎かった。完全な逆恨みだけど、私たちのメンタルは完全に病んでたのね」

と他人事のように言った。

「だけどね、何もかも失って、由利亜も私も気づいたの。無条件に愛してくれる存在は最も近くにあったって」

拝殿から戻り、神木の影で心配そうにこちらを見ている女性を歩花が見ていた。

「両親が支えてくれたからこそ大きくなれた。間違っても立ち止まっても、道を照らしてくれるのはあの人たちだって」

吹っ切れた様子の歩花はとても輝いて見えた。

「それにね、この子が教えてくれたのよ。生きているすべての存在が奇跡なんだって」

歩花の言葉に、美咲も大きく頷く。

「だからこそ、本当にあの時はごめんなさい。あなたとお腹の赤ちゃんを追い詰めるなんて、絶対に許されることではないわ」

そういって再度頭を下げる歩花に、

「そうですね。ストレスはよくありません。だから、お互いにあの日のことは水に流しましょう。どうしてもと言うのなら、松本さんが元気な赤ちゃんを生んでくれることで許すことにします」

と、美咲は笑って首を傾げた。
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