寡黙なダーリンの秘めた愛情
「もうジムは帰っていいぞ」

「何だよ、蓮。親友の善意にそれはないだろう」

「美咲に付き添ってくれたことには感謝する。だが、お前が夫で、子供の父親と思われるのは許せない」

ここは産婦人科の前。

大きなお腹を抱える妊婦さんやその家族の視線が痛い。

ただでさえ、場を混乱させるおばさんの攻撃を受けた後だ。

これ以上のダメージは避けたい。

「あのう、ジム、蓮くんが来てくれたから後はもう大丈夫だよ。貴重な時間を割いてもらってありがたいと思ってます。本当にありがとう」

「何を言ってるんだ。僕らの大事な美咲のためさ。喜んでお供するよ」

抱きつかんばかりのジムを、全身で蓮が阻む。

「結果は後で知らせるよ。ホイットニーがランチを待ってる。迎えに行ってあげてくれ」

気がつけば11時半を回っていた。

「Ok。結果が出るまでは安心できないらしいからな。僕は一先ず退散するよ」

ジムは゛お大事に゛と美咲にウィンクをすると、足早に玄関へと消えて行った。

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