寡黙なダーリンの秘めた愛情
「すみませんが、休憩コーナーに設置している防犯カメラの保存データを見せていただけますか。今から約3ヶ月前のデータを」

蓮は、美咲と別れてすぐに警備室に向かった。

ここに来るのは、以前、八雲メディカルが開発した医療機器のデータが盗まれそうになったときに通いつめて以来だ。

幸い、犯人は蓮が囮として作っていたデータを持ち出したため大事には至らなかったが、主犯格の犯人が捕まっただけで、共犯者は不明なままで現在に至る。

そのため、八雲メディカルにはありとあらゆるところに防犯カメラが設置してあるのだが、その事は重役以上の人間しか知らない事実だ。

もちろん、重役秘書にも知らされていない。

どこから情報が漏れるかわからないからだ。

防犯カメラのデータの保存期間は、その目的や主旨によって長さが異なる。

コンビニで1週間~1ヶ月、金融機関で1ヶ月~1年と開きがある。

八雲メディカルでは1年間保存できるメモリを使っていることから、美咲を殴った由利亜の様子などすぐに見つけることができるのだ。

休憩コーナーはリフレッシュを目的に設置しているので気が緩みやすい。

少し離れた場所にあり、人気も少ないため、逢い引きにも利用されやすい。

警戒を解くため、そこに置いた監視カメラの形状は、小型で、一見してそれがカメラだとは認識しにくいように設計してあるのだ。

それがこんなことに役立つことになるとは、蓮は怒りを含めた笑いを浮かべた。
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