寡黙なダーリンの秘めた愛情
美咲からようやく安心する返信メッセージを受け取った蓮は、副社長である父・誠也と共に、循環器学会が行われている京都に来ていた。

今日は、医療機器を展示ブースに並べて、明日の企業展示にのぞむ準備をすれば、夕方はランチョンセミナーに協力頂く教授を接待するだけでよい。

朝方、愛しの美咲と会社で別れ、その寂しさから蓮はすでに何度も美咲にSNSのメッセージを送っていた。

日頃から、蓮のメール10件に対して1件程度しか返信してこない若干クールな美咲だが、蓮が京都につくまでの2時間という長時間に1件も返信しないなどということは、これまで一度もなかった。

゛美咲の側にはホイットニーがいる゛

懸念することは何も起こらないと思ってはいても、実際に知らない間に美咲を傷つけていた前科が蓮にはある。

アメリカから美咲が帰国後は、ほぼ毎日顔を合わせていたのだから、毎日でも顔を見なければ落ち着かない。

昨年、美咲が製品開発部にいた頃でも、蓮の出張には゛勉強゛と称して、美咲を連れて行き側においた。

蓮と美咲が同じ部署で働く限り、゛出張と土日゛以外は嫌でも顔をあわせることになる。

蓮は、美咲と顔を合わせないはずの出張という機会に敢えて美咲を同伴することで、できるだけ美咲から目を離す機会を減らしてきたのだ。

結婚してからは、美咲の私生活は丸々手に入れた。

今回はビッグプロジェクトということで、泣く泣く美咲を置いて京都に来たが、離れてしまった、と思ったそばから不安と寂しさが蓮の胸に立ちこめてきていた。

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