あまい・甘い・あま~い彼に捕らわれて
「ごめんな。

俺のせいで綺麗な杏の身体に傷痕残して」

そういって触れる颯馬の右腕にも火傷の痕が残っている。

「颯馬の腕にも残ってるでしょ」

「俺のはたいしたことないよ」

私よりもはるかに小さな五百円玉ほどの痕。

子供の頃に親に内緒で二人でお店のオーブンでお菓子を作った。

熱い天板を出す際に颯馬が手を滑らせて、颯馬より背が高かった私が彼をかばったのだ。

拳ほどの火傷は皮膚移植をしたがうっすらと今も痕は残っている。


「ごめんな。痛い思いさせて」

「ううん。いいよもう。きにしないでよ。何度も謝ってくれたでしょ?

そういえば一緒に同じ病室に入院したよね。
痛かったけど颯馬と一緒で楽しかった。」

「何言ってんだよ。
夜の病院怖がっていつも俺に一緒のベットで寝ろって半べそかいてたくせに」

「えーっ!?
それって颯馬でしょ!
トイレについてこいってべそかいてたの」

「はぁ!?杏だろ、それ!」

「「ふっ」 」
 
顔を見合わせて同時に笑いだした。


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