蝉のなく頃に
家族

7月中旬、梅雨が明け猛暑日が続きニュースでは
全国各地で熱射病で倒れた人が続出していると
放送が連日続けられた

都会に住み始めて10年が過ぎたが
この暑さは異常な暑さだ

「やだぁ相沢さんってばぁ」
ガタンッ
「あ、ごめぇん夏歩(かほ)ぉー」
「……大丈夫よ」

クーラーの効いたオフィスの中
優雅にコーヒーを飲みながら
同僚の女子たちが私の隣の席の
顔の整った浅黒い男性の周りにまとわりついて
私にまで被害が被る

机の上に溜まりに溜まった書類が
雪崩のように椅子の周りに散乱した

「大丈夫か?」

隣の席で同僚の相沢 翔太(あいざわ しょうた)
女性たちの人気の的
仕事も淡々と済ませる為、上司からの
信頼も得ている

私はこの男が苦手だ

相沢の方まで散らばった書類を
手に取り私に突き出した

「こんなのさっさと終わらせろよな」

「……わかってるよ、一々うるさいんだから」

私が小声で返すと、相沢はムッと顔を(しか)めた
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