君への愛は嘘で紡ぐ
「あとは実践あるのみ」


早速あの場に立つのかと思うと、緊張で足が震える。


「っと、その前に調理場に行っておこう」


白川さんに手を引かれ、調理場に入る。
ケーキメインの料理だから、甘い匂いがする。


「店長、玲生が言ってた小野寺さん、ホール入ります」
「了解」


声だけで、店長の姿は見えなかった。
それから心の準備をする間もなく、お客様の前に立つことになった。


笠木さんが接客をしていて、瑞希さんたちは本当に待ってくれている。
ほかにもお客様がいる。


「接客は玲生の真似で大丈夫。積極的にお願いね」


白川さんは私の背中を押し、厨房に戻った。


注文を聞き終え、空いた皿を運んでんいる笠木さんと目が合う。


「頑張れ」


すれ違いざまに囁かれ、不思議と緊張が和らいだ。


「すみません、注文お願いします」


バインダーとペンを持って呼んでいるお客様の席に行こうとしたとき、白川さんの言葉を思い出した。


返事はしっかりする。


だけど、この場合どう返事すればいいのかわからない。


「はい、今行きます」


迷っている間に、笠木さんが返事をした。
横を通り過ぎて行く。


……私、どうしてここに立っているのだろう。
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