君への愛は嘘で紡ぐ
笠木さんの言葉が頭によぎった。


難しく考えなくていい。
彼女を見る。


私は彼女に視線を合わせるために、地面に膝をついた。


「どういたしまして。カバン、好きなのですか?」
「うん!」


笠木さんに見せていた笑顔を私にも向けてくれて、少し変われたような気がした。


「またたくさん持ってきますね」
「本当?」
「はい。そのときはまた、お話してくれますか?」
「もちろん!」


自分が相手を見るだけで、こんなにも変わるのか。
私は少女とのちょっとした会話がとても嬉しかった。


「お姉ちゃん、お名前は?私は美花」
「小野寺円香です」
「円香ちゃん、またね!」


美花さんは手を振り、帰っていった。


ほんのわずか意識するだけで、誰かと話すことを楽しいと思えるようになった。
このことを笠木さんに伝えたくて、私は急いで戻った。


だけど、そこには笠木さんと先生はいなかった。
それだけではない。
荷物も全てなくなっていた。


「お姉さん、小野寺さん?」


状況が飲み込めずにいたら、隣で出品をしていた女性に声をかけられた。


「そうですが……」
「玲生ちゃんたち、急用ができたから帰っちゃったのよ」
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