結婚してみませんか?
二軒目の店に到着した。一軒目の賑やかな居酒屋とは違って、店内は薄暗く落ち着いた雰囲気で、大人の雰囲気が漂うバーだ。

慣れない場所と雰囲気に、何か落ち着かない。

そんな中、相沢さんは慣れた感じにカクテルを注文した。

「乾杯。」

目の前に置かれたカクテルを手に取り、私に向かって微笑んだ。

「こういうオシャレな店…よく来るんですか?」

少しの沈黙の後、私は相沢さんに話かけた。

「うーん、たまに来るかな。」

「そうですか。」

会話が終わる。さっきまであんなに話してたのにどうしたんだろう。店の雰囲気を壊さないようにしているとか?

「…恋ちゃんと大人の話をしてみたくて、ここに連れて来たんだ。」

急に話を始めたかと思ったら…大人の話って何だろう。

「大人の話って?」

「恋ちゃんさ…理想の結婚相手ってどんな人?」

「理想?面倒じゃない人、ですかね。」

「へぇ、例えば?」

やけに話に食いついてくるなぁ。酔ってるのかしら。まぁいいけど。

「私のプライベートに干渉しない、ルームシェアくらいの距離が丁度いい…かも。」

流石にドン引きかな。他人からしたら距離を置く関係は理想でも何でもない。到底理解してもらえないだろう。でも私は他人と深く関わるのが嫌だった。相沢さんもなんとも言えない表情で私を見てくる。

「人に関わるのが面倒なんだ。恋ちゃんは結婚に向いてないかもね。」

にこやかに微笑みながら、ズバッと言う。結婚に向いてないのは分かってるし、結婚する気もないから何を言われてもいいけど。

「俺もさ、恋ちゃんと同じなんだ。結婚に向いてない人間。」

「…え?」

「結婚して自分を縛られるの嫌だし干渉されたくない。もちろん他人と深く関わりたくない。だから結婚するつもりもないし、特定の彼女も作らないようにしてた。」

へぇ意外。(ひね)くれた考えをしているのは私くらいかと思っていたけど、こんな身近に似たような人がいるなんて…。

でも何でこんな話をするのか、不思議に思いながらカクテルを飲んでいた。

「それでさ、恋ちゃん。」

「はい。」

「俺と…結婚してみませんか?」

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