結婚してみませんか?
「彼は今ここにいるはずです。」

笹倉さんはそう言って編集部へと案内してくれた。

「相沢君、来客です。」

「あ、はい。」

PCに向かって仕事をしていた相沢さんだったけど、笹倉さんの声に反応して振り返った。

「笹倉さんと…恋ちゃん。」

私は勝手に会いに来てしまった恥ずかしさからか、下を向いて相沢さんと目を合わせなかった。

誰も声を出さず編集部内はシーンとなる。

「じゃあこれで失礼します。」

笹倉さんは案内が終わると、そのまま帰ろうとした。

「笹倉さん、ありがとうございました。…あの、私がここに来た事、母には…。」

「はい、内緒にしときます。」

私がお願いすると、何かを察知したのか、笹倉さんは少し微笑んで帰って行った。

「恋ちゃん…来てくれたの?」

相沢さんは私の元へ近寄ってきた。

「邪魔してごめんなさい。外で待ってたんですけど、笹倉さんが案内してくれて…。」

「今、今日撮った写真をチェックしてるんだ。もう少しで終わるから待ってて。」

大きな手で私の頭をポンっとすると、そのまま席に戻り、PCに向かって仕事を再開した。

「終わった〜。」

相沢さんは椅子に座ったまま、ん〜っと手を上に体を伸ばす。

「ごめん、お待たせ。」

「お疲れ様です。」

「取り敢えず、外出ようか。」

2人で会社ビルを出る。何だかこの流れで結婚の話を持ち出すのは恥ずかしい。どうしよう。黙々と歩く。

「ご飯食べに行く?」

「いえ…話したらすぐ帰りますので。」

「話って…この前の結婚の話?」

「…はい。」

「じゃあここで話すのも何だから、俺の家に行こうか。」

何故か相沢さんの家に行く事になった。そのまま駅へ向かい、電車に乗る。

< 12 / 58 >

この作品をシェア

pagetop