想われて・・・オフィスで始まるSecret Lovestory
エピローグ
*   *   *

三ヶ月後。

12便にご搭乗のお客様———

響くアナウンスと、スーツケースを引いて行き交う様々なひとびと。
あらゆる出会いと別れが、日々繰り広げられる空港という場。涙も笑顔も飲み込んでたたずむ場所だから、わたしたちも周りをはばかることなく、そのひとりになれる。

直斗さんの見送りは、彼のそれとない希望で佐倉さんとわたしのふたりだった。

「向こうの教授数人に、直斗のことをメールで紹介しておいたから。コンタクトをとるといい」
佐倉さんが言う。

「ご厚意感謝します。きれいな女性だったら、もっといいんですけどね」

「それは自分でどうにでもなるだろ」
苦笑まじりに返す。

「語学習得のいちばんの近道は、恋愛っていいますからね」

直斗さんならイタリア女性にももてそうだな。帰国する頃には、今以上に恋愛マスターに…ってそうじゃなくて。

「たまには近況教えてください。こちらもメール送りますから」

「未練がましくなっちゃうじゃないですか。向こうで早く素敵な女性に出会えるように祈っててください」

いつもの軽口と飄々としたものごしで、機内持ち込みのスーツケースを引いて、直斗さんは搭乗ゲートの向こうに消えていった。
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