想われて・・・オフィスで始まるSecret Lovestory
佐倉さんへの想いは深まる一方だけど。彼の多忙から、メッセージのやりとりや電話や食事も、寸暇を縫ってという状況だ。
わたしのために時間を作ってくれるのはありがたいけど、もっと彼のためにできることがいいのにと思う。

その日の午後、佐倉さんはクライアントとの打ち合わせが2件入っていて不在だった。

わたしはインターネットを駆使して、ミラノで開かれた家具の国際展示会の情報を収集していた。直斗さんの指示で、エル・コニール社からの依頼のためにトレンドを探るのが目的だ。

「環境問題への関心の高まりは、家具のデザインにも影響を及ぼしており…」
英文の記事を四苦八苦しながら訳していると、栗原さん、と直斗さんから声がかかった。

「今日予定がないようなら、夕飯でもどうですか?」

パソコン画面のRTC(リアルタイムクロック)に目をやると、8時を回っている。
集中しているうちに、いつのまにか時間がたってしまっていた。

「あ、そうですね」
異動してからこのかた、直斗さんにはずっとお世話になっているし断る理由はなかった。
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