彼女になれない彼女
7時間目の終わりのチャイムと同時にみんながポツポツと動き始める。
野球部の報告会だ。

彩乃と弥恵がくだらない話をしながら廊下を進んでいく。

平良はどんな顔してるかな。
見たくないな。

今日の夜ご飯、どうしよう。
私はどう振る舞ったらいいんだろう。

負けることは分かってたようなものなのに、何も考えてなかったな。

気付くと体育館に着いていた。
山本先生が立っているところに自然と集まる。

「番号ごとに並べー。」

山本先生の声は単調だ。
あいうえお順の出席番号順に2列に並ぶ。

全体が揃ったらしく、報告会が始まる。
野球部がみんなの前に並んだ。
平良はやっぱり、2年生だから真ん中。
うちのクラスのちょうど前の位置だ。

俯いていて、顔がよく見えない。

今日は30度を超える暑さだったようだ。
教室も暑かったけど、外はもっともっと暑かったんだよね。

平良が最初から投げ続け、7回までで4失点。
そこでピッチャー交代し、残りの2回は3年が投げたらしい。
その2回で2失点。
結果、6-0で負け。

それでも強豪校を相手によくやった方だと思う。

平良は初戦から投げ続けてきたわけで、今日の試合も心配されていた。

途中から平良はスッと顔を真っ直ぐに上げた。
すごくスッキリとした顔をしていた。

少しホッとする私がいた。

今日はいつも通り明るく我が家で迎えよう。
ママにはちょっと頑張ってもらって、平良の好きなささみの串も入れて。
また明日から気持ちを入れ替えて頑張ってもらえますように。

平良、おつかれさま。
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