彼女になれない彼女
24日の予定
今日は飲み会の団体客が2階の座敷に入ってるせいで、いつもより賑やかな店内。

私はいつも通りご飯を食べ終えて、何気ないフリをして平良を待つ。

平良が来たのは19時半を過ぎた頃。
いつも通りの「こんばんはー」という声が店に響く。

私はハッとする。

24日花火大会行かない?
24日花火大会行かない?
24日花火大会行かない?

呪文のように誘い文句を頭の中で繰り返す。

平良が席に座る。

「めっちゃ腹減ったー。」
「おつかれ。」
「昼から何も食ってねえよ。ごはんっ、ごはんっ、ごはんっ、ごはんっ!」
「子どもか。」

ケラッと平良が笑う。

ママが準備していたのか、すぐに定食がきた。
平良が本当に子どものように目を輝かせる。

「わー、いただきまーす!」
「ゆっくり食べなよ。」

私は平良が気持ちいいほどに食べていく姿を眺める。
毎日毎日当たり前のように見てきた姿。
実はこの姿が好きだったんだなあと気付く。

「あ、そうだ。」

突然平良が私を見る。

「夏休み中さ、全然遊べてないじゃん。どこか行く?」

きた。
なんてタイムリー。

「うん。」

突然のデートの誘いに、私は大きく首を縦に振った。

「沙和、いつ空いてる?」
「私は夏期講習とお盆以外そんなに予定ないから大丈夫。」
「じゃあ20日の土曜日とかどう?」
「20日?うん、大丈夫。」
「おー、やった。」

予想外の笑顔を見せる。
思わずドキッとする。

やったって喜んだ?今。

私も少し勇気を出してみる。

「平良さ、」
「うん。」
「ちなみに24日はどう?」

緊張の瞬間。
いい反応をお願いします。

平良は「24日、24日・・・」と呟きながらスマホで予定を確認する。

すぐに「あっ」と反応があった。

どっちだ?

「練習試合だー、ごめん。」

私は「あっ・・・」とだけ声が漏れて、固まってしまった。

「沙和?」

平良から声をかけられて、やっとハッとする。

「ああ、うん。」

私はやっと笑顔を見せることができた。

花火大会、ダメだ。
でも20日デートができる。

複雑な思いでいっぱいの夜だ。
< 40 / 65 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop