期間限定『ウソ恋ごっこ』
心からの感謝の言葉と共に、先輩がサッと右手を差し出してくる。


その爽やかでキラッキラで無敵な笑顔ときたら、もう……!


これにどうやって抵抗しろと? 無理ですよ。完敗ですよストレート負けですよ。


無力なあたしができることなんて、ひとつしかない。


「こ、こちらこそ、どうぞよろしくお願いします」


蚊の鳴くような声で、あたしはオズオズと右手を差し出した。


すかさず先輩が、大きな両手でギュッと包み込む。


ああ、憧れの先輩との記念すべき握手なのに。まったく喜べない状況がひたすら悲しい。


「あ。そういえば美空ちゃん、俺になにか用があったんじゃなかったっけ?」


ふと小首を傾げた先輩に、あたしは弱々しい笑顔を向けた。


「いえ。なんでもないです。気にしないでください」


「そう? うん、わかった」


ニコニコしている先輩に気づかれないように、あたしはこっそりこっそり、小さくため息をついた。


はあぁ……。どうしよ。


真央ちゃんに叱られる……。






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