期間限定『ウソ恋ごっこ』
「いや、今日はなにも作らない」


「え?」


「宅配ピザを用意したんだ。今日は時間ギリギリまでふたりでゆっくり過ごそう。最後なんだから、いいだろ?」


最後という言葉がズシンと胸に響いた。


あぁ、やっぱり先輩は今日で終わらせるつもりなんだ。この『ウソ恋ごっこ』を、どうにかしてこれからも続けるつもりはないんだね。


「……うん」


勝手に期待して、勝手に自滅したあたしは、そう答えるしかなかった。


「ちょっと座って待ってろ。ピザ用意してくるから」


リビングに通されて、応接セットの長ソファーに座りながら、自分の中の悲しみと向き合った。


こうしていると、なんだかふたりの関係にピリオドを打つための儀式をしに来たようで気が滅入る。


いつもはスッピンなのに、今日だけ特別に極薄のナチュラルメイクをしている自分にも嫌気がさした。


最後の自分を綺麗に見せたいの? なんか、いじらしいっていうよりも、いじましい。


でもメイクでもしないと、どんな顔して過ごせばいいのかわからないんだ。もう今日で終わりと知ってて、普通の顔して過ごせる気がしない。
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