期間限定『ウソ恋ごっこ』
「……あ、あたし、自分でやる、から」


鼻声でそう言って真央ちゃんの隣に立つと、真央ちゃんが静かに首を横に振った。


「いいよ。あたしがやっとくから美空は休んでなよ」


「ううん。やらせて」


あたしは、自分でやったことの後始末もろくにできなかったんだから、せめてこれくらいやらなきゃ。


袖をまくって、食器を洗っている間も涙はどんどん流れてくる。


両目と鼻の下を何度も何度も拭いながら、考えるのは近藤先輩のことばかり。


昨日の夜、家の前で先輩と別れたとき、世の中にこんなに悲しい別れがあるのかと思った。


なのに今、それよりもっと最悪な結末を迎えてしまった。


あたしは近藤先輩に失望された。好きな人に嫌われて、恨まれて、憎まれたまま二度と会えないなんて。


銀色のシンクに流れる白い泡を見ながら、あたしもこのまま排水溝に流れて消えてしまいたいと心の底から思った。


泡のように先輩への想いを消せたなら、あのウソ恋の日々を消せたなら、どんなにいいだろう。


でも、できない。これはぜんぶ自業自得。


自分が蒔いた種なんだ……。


泣き声が震えて、肩が大きく上下する。赤ん坊みたいに泣きながら食器を洗うあたしの背中を、真央ちゃんがいつまでも優しく撫で続けてくれていた。









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