あなどれないね、世唯くん。



藍野くんが、文化祭のクラス委員の子にわたしと体型が似た子の衣装をきちんと借りるという用意周到さ。


「もう着替えただろ?中入っていい?」

「えっ、やっ……」

う、うそ……っ。
まだ自分の姿きちんと見てもいないのに。
ってか、そもそも確認できる鏡すらないし。


そして今さらながら、教室の鍵をきちんと閉めておけばよかったと後悔した。

同時に、藍野くんによって扉が開けられた。


「う……っ、待って……よ」

目の前にいる藍野くんに視点を合わせることができない。

それに、壊滅的に似合ってないであろう自分の姿が恥ずかしすぎて腕をクロスさせて隠す。


さっきから何も言ってこない藍野くん。
きっと、ぜったい似合ってないから言葉も出ないんだ。

たぶん、わたしを笑うためにこんな格好させてるに違いない。


「もう……着替えていい、ですか……っ?」

「いや……ダメ」


なんて声が聞こえて、顔を上げて驚いた。

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