見習い夫婦～エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます～

「今着ても恥ずかしくないようなパーティー向けの服は持ってないんですよね……。着物じゃダメなのかな」


やっぱり無難な着物に逃げたくなっていると、私の隣に静かに座っていた周さんが口を開く。


「訪問着で豪華すぎない帯にすれば問題はない。が、たまには洋服でもいいんじゃないか。見合うものを買ってやる」


彼は淡々と言い、グラスに残っていたワインを飲み干した。

また私に似合うものを選んでくれるのかと思うと嬉しいが、いつも甘えてばかりでは申し訳ない気がする。男性からこういう扱いをされたことがなくて慣れていないせいだろうか。


「ありがとうございます。でも、この間も浴衣を買ってもらったばかりだし、お気持ちだけで……」


やんわり断っている最中、周さんの顔がまたしても険しくなってギクリとした。どうやら返答を間違えたらしい。


「パーティードレスのひとつくらい持っておけ。女子力が枯渇しないように」

「うっ」


ごもっともなひとことに簡単に黙らされた。そうだよね、やっぱり女子の嗜みとして持っていたほうがいいよね……。

やや毒を吐いた周さんは、空のグラスを手に腰を上げる。キッチンへと向かう彼を見送ると、藪さんが呆れ交じりの笑みを浮かべる。