見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~
「結婚しない人生ももちろん否定しないけど、やっぱり私は、希沙ちゃんが女として幸せになる姿を見たいなって思う」


優しく微笑みかける彼女は、〝彼氏作りなよ〟とか〝結婚っていいものだよ〟と押しつけたりはせず、私の生き方を肯定する人。でも、本音は誰かと支え合って生きてほしいと願っていたのだろう。

きっとこれからも温かく見守ってくれるんだろうな、と思うと感謝したくなって、「ありがとう、心晴さん」と笑みを返した。

そうしてしばし話をしていたとき、見覚えのある人がエントランスにやってきたので、私は目を丸くした。


「あれっ、富井さん!?」


甚平みたいな七分袖のカーディガンを羽織った男性は、ディナーショーぶりに会う富井さんだ。

私に気づき、なんだか険しい表情でこちらにずんずんと近づいてくる彼に、とりあえず挨拶をする。


「どうも、お久しぶりで──」

「希沙ちゃん」


目の前にずいっと顔を近づけられ、私は〝ひいっ〟と叫びそうになる勢いで心晴さんに肩をくっつけた。

ど、どうしたんだ富井さん……目の下にクマもできているし、心なしかげっそりしている気がする。端整なお顔がもったいない。
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