見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~
陸は『どうして姉ちゃんからこんな可愛い子が産まれんの!?』と相変わらずひどい言い様だが、棗には結構気に入られていて、いい叔父さんになっている。

そして自分も結婚を意識しだしているとか、いないとか。

私の両親にもめちゃくちゃ可愛がってもらい、周りに助けてもらいながら、棗はすくすくと育っている。

ここまでそれなりに大変だったが、過ぎてしまえばそれもすっかり笑い話だ。いつの間にか、私も強くなったのかも。

そんなふうに思って、お茶を注ぐ真似をする彼女を目を細めて眺めていたときだった。和室の入り口から、優しく低い声が響く。


「煎茶道ごっこをする幼稚園児はなかなかいないだろ。将来有望だな、棗は」

「あ、おとーさん!」


襖に片手をかけてこちらを見ていた周さんに、棗は気づいた途端パッと顔を輝かせて立ち上がった。

髪は以前より少し長めになり、前髪は斜めに流している。ブラックスーツをびしっと着こなし、シルバーのネクタイを合わせたフォーマルなスタイルも文句なしの旦那様だ。

アラフォーだというのにその年齢を感じさせない容姿で、何年経っても惚れ惚れしてしまう。

棗もお父さんが大好きで、彼を見ると一目散に寄っていくから、嬉しくもあり、ちょっぴり寂しいときもある。
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