お見合い相手のお姉さん・・・好きになってもいいですか?

「あのさ。もう一度言うが、俺は・・・本気だから・・・」

「はぁ? 」


 冷めた目を結人に向ける紗良。


「お前の事、本気で好きだから。あの夜の事、後悔していない。・・・」


 フイッと、紗良は視線を反らした。


「勝手にしてよ。もう、私は忘れましたから」


 シレっと答える紗良。

 そんな紗良を、結人はギュッと抱きしめた。


「ああ、勝手にする。お前が何を言おうと、俺は変わらない! 」


 と。

 そのまま結人は紗良のブラウスのボタンを数個外して、胸元にチュッとキスをした。


 ちょっとチクっとした痛みを感じた様な気がした紗良。


 その痛みは数回した。



 結人の唇が離れると、紗良はシレっとしてそっぽを向いた。


「俺の跡。消えてたから、もう一度つけたよ。また消えたら、つけるから。何度でも、何度でも。俺は・・・」


 紗良を見つめている結人の頬に涙が伝った。


 その涙を見ると、紗良は胸がキュンと痛んだのを感じた。


「・・・ごめん。・・・こんなに、人を好きになった事は初めてだから。・・・」


 シレっとしたまま、紗良は視線を落とした。


「なんとなく解る。お前が、そんな顔していても。本当は辛いんだって・・・」


 そっと結人は紗良の頬に手を添えた。


「一人で抱え込むなよ。・・・誰かに愛され、そして、お前も素直に愛していいんだ。・・・」

「何言っているの? こんなババア捕まえて。・・・」


 震えるような声で紗良が言った。


「何を言い出すかと思ったら。それ? お前がババアだなんて、誰が言ったんだ? 」

「・・・知らない・・・」


 フッと、結人は笑った。


「もう、行っていい? 」

「あ、ごめん」


 結人は資料室の鍵を開けた。


「先に出るから。・・・後から出て・・・」


 そう言って、紗良は先に出て行った。



 結人はポケットから薬の袋を取り出した。


「やっぱり・・・そうだったんだ・・・」


 ギュッと薬の袋を握り締めて、結人は資料室から出て行った。
 
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