とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
一、過去系両想い
「わあっ超綺麗っ」

完成した桜色のネイルを見て、お客様が興奮していた。

「すっごーい。イメージ通りにできるとか超嬉しい」

 思い切って買ったスプリングコート。それに合わせてほしいが、オフィスは派手なネイルは禁止なので淡い色とリクエストされた。

甘いピンク色のチュールワンピースと白のロングコート。そのコートに合わせるのは、難しくはない。

 でも喜んでもらえて素直に嬉しくて照れてしまった。

「劉宮さん、私ね、彼氏できちゃったの」

「へえ。おめでとうございます。でも美琴さん、可愛いからいない方がおかしいなって思ってたんですよね」

 爪を見ながら微笑む美琴さんは、レジでお財布を取り出すときも始終笑顔だ。

 肩よりやや下まで伸ばされた艶やかな髪、ガーリーで甘めのスカートにストイックな白のブラウス。

 お洒落を全身で楽しんでいる彼女は、いつも笑顔で何をしていても楽しそうにしていて、好感が持てる常連客だ。

「もー。嘘嘘。私なんて全く可愛くない。劉宮さんの方が綺麗」
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