とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
「貴方、何時まで眠ってるの?」

寝癖がついたままで珈琲を作っていたら、腕を組み足を優雅に組みなおしながら母が言う。

私を私立の女子校に転入させるぐらい、行動力がある人だ。というか、母の母校だったっけ。

祖父が歯科医で、母は祖父の病院で受付をしている。

昔からお嬢様として大切に育てられた母は、自分の意見が通らないのは許さない。

「何時って、私の休日なんだから勝手でしょ」

 子どもじゃあるまいし。

 連絡なしで現れたのは、母の方なのに。

「私ならもう起きて、朝食も済ませているから驚いたのよ」

「そう。私はお母さんがいつ起きようが、御飯食べてようが気にしないから、私のことも気にしないでね」

珈琲をテーブルに置くと、母は深い溜息を吐いた。

てっきり嫌味の一つや二つ、まだ飛んでくると思ったのに。

今日はそれだけで終わった。

「貴方に、とても素敵なお話をもってきてあげたのよ」

母がカバンから、有名な高級ホテルのパンフレットを取り出した。

そこの豪華絢爛な庭は、日本だけじゃなく外国からも評価が高いとか。

でもなんだろう。

祖父の祝賀会でもするのかな。

「私も急に言われたので、写真がないんだけど。でも貴方には一度、言ってるって言っていたから」

「何が?」

「要は南城グループの長男とのお見合い」

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