とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
三、雷、雨、不器用に降り積もる。
「信じられない。今週一週間、ずっと雨だって」

焼いたトーストの上でバターが滑っていく。

彼がお皿をトーストの下に置き、滑り落ちたバターをキャッチした。

「ああ、華怜さん、雷が駄目だっけ」

彼もテレビの天気予報を見ながらクスクス笑っている。

「なんで知ってるの!?」

「中学の時、話したよ。台風が近づいた時」

 サラダをお皿に盛りながら「お」とテレビを見て目を見開く。

「木曜に台風接近。けっこう中心まで来る」

「県外に脱出したい」

台風の日、予約が入ってるけど来るのかな。

マンションの下でバス停を睨みつけバスが着た瞬間走って乗れば、店の前まで雷に合う確率は減るけれど、正直を言えば予約がないなら休みを頂きたい。

「県外に脱出なら、沖縄に別荘があるよ」

「沖縄ってもっと台風が多い県じゃなかったですか!?」

無理!っというと、彼は楽しそうにククッと口元に拳をあてて笑っている。

「君を縛って沖縄に連れて行きたくなった」

「最低っ」
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