キミの嘘
「すみませんでした」
「いいえ、送ってもらっちゃってごめんなさいね」

「それじゃ、高来さん、また明日」
「うん」
失礼しますと言いながら礼儀正しく,
お辞儀して橘くんはかえっていった。

「素敵な子ね~」
お母さんが何かいいたげに私を見る。


「・・・・・」


橘くんは今日の校庭での出来事とかお母さんにきちんと説明して
自分がきちんとフォローできていなかったからと謝っていた。


橘くんのせいじゃないんだからそこまでしなくてもいいのに・・
なんだか申し訳ないな。

私の不注意なのに。
わざわざ説明して謝るなんて、橘くんの責任感が見えたような気がした。


あまり、意識したことなかったけど
橘くんは、いつも中心になって
クラスをまとめてくれているのかも。

学年の中でまとまりも早いし
とりくむのも早い。

橘くんは目立ちはしないけど
縁の下の力持ちって感じ。



「・・・・・・」

なんだか、疲れて
脱力感がある体を無理に奮い立たせる。

すこし痛さが残る頭を押さえて二階にある自分の部屋に入ろうとしたとき


向いにある自分の部屋から縁が出てくるところだった。

目と目が合ったけど、すぐに、視線を外した。

なんとなく気まずい。



「・・・」

「ボール。ぶつかったんだって?」
「あっ、うん。」

なんか縁の顔が見れない。
今日のことは、隣のグランドにいたから
騒ぎを聞きつけているだろうし

こうして家まで橘くんが送ってくれたことも知っているだろうし、
橘くんとお母さんの話は聞こえていた・・・と思うし。

なんか、いろいろ・・考えてしまう。

なんで・・・・私緊張しているんだろう・・。

その場に固まっていた私に

「・・・・・今日はゆっくり休め」

私の頭を優しくなでて縁は一階へ降りていった。

縁に触れられたところが熱を帯びる。
そしてすぐに
切なくなって胸が苦しくなる。


・・・あなたが私に触れるたび私はどうしたらいいかわからなくなるよ・・・。




ブルル

「??」
スマホのバイブの音が廊下に響いた。



「杏~?大丈夫だった??」
部屋に入り、ベットに腰掛けると元気なみきちゃんの声が聞こえた。

心配して、かけてきてくれたみたい。

今帰ってきたことを話すると、ホッとした声が聞こえた。

ふと、

壁に掛けてある時計を見ると、時間はもう8時過ぎていた。

練習は放課後にあって
チーム対抗の試合形式にして
すぐに、ボール当たったから
2時間?くらい保健室で、寝ていた?



「心配かけてごめんねー」
「ううん、よかったよ!なんともなくて。ほんと、大変だったんだからー」

みきちゃんの話しぶりから、わたし、かなり迷惑かけたんだろうなぁ。


「うん、ほんと、ごめん」

明日からの練習はあ氏を引っ張らないようにしないと。

「でも、かっこよかったなぁ。縁先輩!」
「えっ、、」

予想外の名前が聞こえて一瞬、言葉を失う。
黙り込んだ私をよそに
みきちゃんは、興奮した様子で話し続けた。

「凄かったんだよー!杏がボールぶつかって倒れから!となりのグランドでサッカーしていた縁先輩がすぐ駆けつけて杏のこと保健室までお姫さま抱っこで連れていったんだから!!」



...
縁が??
なんで?
縁が??

沈黙する私に御構いなしにみきちゃんはまくしたてる。


「もう、みんな、ボーゼンとしちゃってさー!縁先輩かっこいいし!素敵だったなぁ」


縁が保健室に運んでくれていた?、、わたしを?

ふと頭の中に蘇る聞き覚えのある声。

<<杏・・・>

頭のなかに響く、あの声は・・・・


夢、、だと思っていた。

それじゃ・・あの唇に残る感覚は?

思わず唇に手を当てる。

あの感触も、間違いじゃなかった?

「あのあと、いったん解散して、教室戻ったんだけど、杏が脳震盪だから誰か帰る用意とかしてほしいって保健室の先生がクラスに来たの。
私と橘くんが後から保健室行ったんだけど、杏眠っていたし、私もバイトがあったから先帰っちゃって。ごめんねー。」

「あっ、ううん。大丈夫。」

「でも、橘くんと二人きりだったんでしょ~?」

「帰り送ってくれたよ」
「うふ・・やーぱり!杏のことかなり心配していたよー。」

「・・・・・・」


スマホからみきちゃんの含み笑いが聞こえる。

「橘くん、杏のこと、ずっと好きみたいだもんねー」

「えっ?」
スマホを床に落としそうになる。


「いっちゃおうかな~。杏はしらないけど、去年、二人で体育大会で役員していたじゃない?あれ、橘くん、わざと役員交代したんだよ。」
「どういう、、?」
「本当は違う人が役員だったの。
でも、杏が決まって、あとで橘くんが交換したみたいだよ!。」

・・・・橘くんの優しそうな笑顔が頭に浮かんだ。




< 14 / 36 >

この作品をシェア

pagetop