極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
顔を寄せて囁かれ、実乃里は泣きそうに胸が震える。


(頑張ってよかった。これでやっと女性として意識してもらえる……)


そう思ったのだが、急に龍司が体を離した。

テーブルからおしぼりを取った彼は、それで思いきり実乃里の顔を拭く。

「わっ!」と驚いた実乃里が抵抗しても、力で敵うはずはなく、二十五分もかけたメイクはすっかり落とされてしまった。

ほぼ素顔に戻された実乃里は、なぜそんなことをされたのかわからず、戸惑いの中で龍司と視線を合わせる。


彼は笑っていなかった。

不機嫌そうでもなく、例えるなら優しい兄のような目に実乃里を映し、諭すように言う。


「お前にこの店は合わない。昼間の仕事だけにしろ。派手な化粧とドレスより、素顔にエプロンでいてくれ。酒と香水より、コーヒーと卵サンドの方がお前に似合っている」

(それは、そうかもしれないけど……)


実乃里は困ったように眉を下げた。

それだと、いつまでも子供扱いされ、龍司に好いてもらえないと思うからだ。

頷かない実乃里の頭を、大きな手で荒っぽく撫でた龍司は、小さく息をついてボソリと付け足す。


「俺は、卵サンドが似合う女の方が好みだぞ」

「そうなんですか!? それじゃあ、私って……既に龍司さんの恋愛対象内?」


< 122 / 213 >

この作品をシェア

pagetop