極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
なにを見たがっていると思われたのか、実乃里がわからずに首を傾げたら、水音を立てて龍司が湯船に立ち上がった。

腰にタオルなど巻いていない。

逞しくも麗しい筋肉美の裸体が、実乃里の見開いた目に映る。

湯に濡れて艶やかに光る引き締まったヒップや太ももまでが、惜しげもなく披露されていた。

後ろ姿であっても、心臓が口から飛び出しそうなほどの衝撃で、耳まで顔を火照らせた実乃里は大慌てで踵を返した。


「す、すみません。今すぐ出て行きますから!」


龍司の裸に見惚れたのは確かだが、下半身を見るまで男湯に居座ろうなどと思っていたわけではない。


(誤解されちゃった。ハレンチな女だと思われたよね。どうしよう、恥ずかしい……)


ガラス戸に向けて走る足元は、下っ端たちが水遊びをしたせいで濡れている。

焦りに加え、そのせいで転びそうになり、実乃里が悲鳴を上げれば、ギャハハと笑う数人分の声が後ろに聞こえた。

龍司の声は含まれていないようだが、実乃里の恥ずかしさは加速して、こけつまろびつしながら男湯から逃げ出したのであった。


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