嘘つき旦那様と初めての恋を何度でも



 そう思わせることは沢山あった。
 名前を知っていたこと。話すときに少し切なく微笑むこと。望と知り合いだったこと。緋色が彼が眼鏡をしているという事を知っていたこと。

 そこまで思い出して、ハッとした。


 「あ………泉さんの眼鏡、買わないと……………。」


 ぶつかって彼の眼鏡を壊してしまったのだ。弁償しなければいけない。今度のデートの時に買おう。そう思った。
 デートなど記憶がある内では初めての事だ。
 どんな所へ出掛けて、どんな事をするのか。今からドキドキしてしまう。


 「泉くん、か………。」

 敬語や名前の呼び方を変えよう。そう提案してくれたのは泉だった。くん付けで彼の名前を呼ぶだけで、妙にくすぐったい気分になる。

 そして、独り言を言いながら思ったのは、「独り事のように話せばいいのかな。」とわかったのだ。それなら出来そうだ、と緋色は思い付いた事にニッコリとしてしまう。



 「デート…………って、どんな服着ればいいんだろう。………ダメだ、フラフラしてきたわ。」


 そんな事を考えているうちに、長風呂になってしまいフラフラになりながら、湯船から出たのだった。


 

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