一生に一度の「好き」を、全部きみに。

他の人が借り物目当てに走り出す中、咲だけはじっとしたままだ。

大丈夫かな……?

『さーて、もう時間がない! 急いでください! ちなみに今回のお題は全体的に難易度が高めになっています! 借り物だけでなく、借り人というお題もありますのでお楽しみに!』

「借り人だってー! きわどい系のお題じゃない?」

「まさかそれを鳳くんが引き当てた、とか?」

きわどい系のお題って、どんな?

『あ、ようやく走り出しました、鳳くん! さーて、どこへ向かうのか?』

「さっきからこいつ鳳のことしか言ってなくね?」

そんな突っ込みもありながら、咲のゆくえを多くの人が見守っている。

先輩たちも咲に注目していて、改めて目立つんだなぁと実感。

「葵!」

えっ……!?

咲はまっすぐにこっちに走ってきた。

「一緒にこい!」

「わわわ、私!?」

全力疾走のあとの咲は、汗を拭いながら肩で息をしている。

さらさらの髪が額に貼りつき、余裕のなさそうな表情。

「頼む!」

「わ、わかった……!」

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