一生に一度の「好き」を、全部きみに。

「いい具合の膨れっ面だったから、つい」

「咲って女嫌いじゃなかったっけ?」

中学のときモテモテな学校生活を送ってたって初対面のときに誰かが言ってたよね。

「べつに」

「うそ。最初めちゃくちゃ態度悪かったじゃん」

今もだけどね?

「嫌いっていうか、俺を見てきゃあきゃあ言う女が嫌なだけ。葵のこともそういうヤツだと思ったんだよ」

「ふぅん。ま、安心してよ。私はなにがあっても咲にきゃあきゃあ言ったりしないから」

「わかってるよ」

咲はわずかに頬をゆるめた。思わず見惚れてしまいそうになるほどの整った横顔。こんな顔を見せてくれるってことは、少しは私への警戒心が薄れたのかな。

「俺、先に教室に戻ってるから」

「あ、うん!」

「さっさと戻ってこいよ」

「うん」

去っていく咲の背中を見つめていると、校舎の中に戻ってすぐに見えなくなった。

あれ?

そういえば。

咲はいったい、なにしにきたの……?

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