一生に一度の「好き」を、全部きみに。
初めて会ったときは変なヤツだと思った。
帽子を目深にかぶったボロボロの格好で俺に歯向かってきたかと思うと、俺の歌声を好きだと言ったりしてわけがわからなかった。
まっすぐぶつかってくる葵からは悪意なんて感じられず、本気で困っているみたいだったから、あのときはそれ以上冷たくできなくて。しぶしぶながらも葵を受け入れた。
その後なぜか高校でまさかの再会。偶然にしては、できすぎてるだろ。
凛とした強さを秘めたそんな目をしている葵。
強気な態度の裏側で、弱さを秘めたような表情が垣間見えることがある。
普段子どもっぽくて鈍感なのに、そのときの葵は妙に大人びていて、儚げで……。どういうわけか、目が離せなくなる。
「ありがと、咲……もう大丈夫」
葵はしっかりと目を開け、ぎこちなく笑ってみせた。
「マジで大丈夫か?」
「うん」
そばで顔を覗くと、たしかにさっきよりもずいぶん顔色がよくなっていることがわかる。
ホッ。
「咲、私ね……」
「うん?」
「心臓が悪いの」
「え? は?」
「ふふ、だからね、心臓の病気なんだよ」
なんのためらいもなく、感情が読み取れないような声で葵は言った。
「心臓の、病気……?」
あまりにも突然すぎる告白に思考が停止する。