隠れイケメンの王子様に恋しました
「土谷、頼みたい事があるんだが」

ある時、工場長にに呼び出された。

「この書類を本社の副社長に届けてほしい。大事な書類だから必ず副社長に直接渡してくれ」

「わ、私がですか?」

こういう重要書類は間違いがあってはならないから工場長か主任クラスの人達が行く。
入社2年目のほぼ新人のなの葉にお鉢が回ってくることはないはずなんだけど。

「ああ、副社長たっての希望でな。なんか気に入られたみたいだな?なんかしたか?」

「えっ!副社長が?そんなお話もしたことないのに何にもありません!何かの間違いじゃないですか?」

勘繰る長谷部工場長にとんでもない!と首を勢いよく振ると、苦笑いの工場長。

「ははっ、そんなに否定しなくてもいいよ。この間出したお茶が美味しかったとかじゃないのかな?まあ、滅多にない機会だから行ってくるといい」

「はあ…」

終わったらそのまま帰っていいからということで、先輩方に言ったらまた大騒ぎになるからと工場長に言われ、みんなにはお使いに行くとだけ言って、朋絵にだけは本社に行くとこっそり言うと、後でどうだったか教えてよねとワクワク顔で言われた。

帰り支度をしてため息をついて工場を出た。

今日はまた大宮さんは休み。
そんな時は仕事もやる気が出ないから天気もいいし気分転換になっていいかと気持ちを切り替えて駅に向かった。
< 38 / 124 >

この作品をシェア

pagetop