トビタイヨ。
『トビタイヨ。』



2019年4月2日。

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「小惑星が地球にぶつかるまで1分間をきりました!!ほぼ間違いなく日本は、いいえ、地球は!!消滅するでしょう!!」

このニュースを最初に見たのは2分前のことだった。
この冷めた日本で何事もなく過ごす普通の日々、総理大臣でも暗殺されないかなど起こるはずもない事を考えながらニュースを見ていた私。

大学生の頃はビールよりハイボールが好きで
コンビニバイトが終わって
廃棄の弁当とハイボールで夜を明かしてた
社会人になった今ではあの夜ってもう帰ってこなくて
ゴミみたいな晩飯と発泡酒で孤独を感じるだけ。

クリスマスやバレンタインだって365日分の1。
明日となにも変わらない。
どうせカップル達はセックスで明け暮れて、何事もなかったかのよーに、間接照明大好きです❤️みたいな顔して小洒落たワイドパンツにNiko and...のトートバックをぶら下げて友達と遊んでる。

「はぁ...。なにかおこらないかな...。」

「緊急速報です!!!」

「はいはい...総理大臣でも殺されましたか?」

「小惑星が地球目掛けて落ちていると発表がありました!到達まであと2分!!!」

「...。」


アナウンサー達も発表を今聞かされ動揺し中には逃げだすものも、またあるコメンテーターは「2分前に発表するはずがない!!20年、いや200年の間違いだろ!!」と冷静に捉えるものもいた。

私はニュースを見て一言も言葉がでなかった。
怖いからではない。
生まれて初めてこんなにもワクワクしていたからだ。

子供の頃親に公園へ連れてって貰うのに置いてかれないか心配で必死で準備をした様に同居している彼氏に満面の笑みを見せ死に支度を始めた。


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「小惑星が地球にぶつかるまで1分間をきりました!!ほぼ間違いなく日本は、いいえ、地球は!!消滅するでしょう!!」

ついに1分をきりカウントダウンが始まった。


59秒。

私は最後を覚悟し、6年前小さな喧嘩が原因でそれ以来話してない家族の元へ電話した。

実家には母と父そして弟が住んでて、いつもなら母がでるが中々でない。

ニュースを見て慌ててるんだろうと思い弟の携帯にかけてみる。

「プルル...ガチャ」
1コール目がなり終わる前に電話にでた。

「もしもし私だけど家にかけたんだけど、ママ取らなくて...、変わってくれる?」

弟はなにも言わず沈黙が続く。

「お母さん自殺しちゃったよ。笑」
「お父さんは!?」
「お父さんは仕事でいないの。助けて!」

「ごめん...ガチャッ」

_____________________


47秒。

右腕を掴まれた感触があり右腕を見て、同居している彼氏の手だと気づき振り向いた。

「俺と...(笑)」

3日間飲まず食わず砂漠で歩き回ったかの様な瞳で震えながらベランダに連れてかれた。

「一緒に死のうよ!笑」
「いいよ。そこ登って私を引き上げて!?」

私は世界が終わる瞬間を自身で感じられるのに自ら死ぬなんて馬鹿だと思いなんの迷いもなく彼をベランダから突き落とした。

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15秒。

ベランダから彼氏の遺体を眺めていた。
下では馬鹿騒ぎして遺体なんか見向きもせず孤独に流れるあの血の何とも言えない赤さが綺麗で...きれいで。

「は...。はは//綺麗やんな笑」

ふと見るとサラリーマン達が次々となにかに取り憑かれたかのようにビルから飛び降りて行く。
その様は今までに感じたこともない「美」を感じる。

しかし、それと同時にどうにか助かろうと物陰に隠れる者や川に飛び込む者もいて
まるでシマウマが飢えたライオンの餌食になることに恐れ逃げ回る様に見えた。

「もっと綺麗に死ねよ。」
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残り10秒のとこでニュースのカウントダウンは止まった。



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1時間後。


何事も無かったかのようTVは放送を続け小惑星の話題は全く出てこない。

街に出てる人たちは、「小惑星は!?」と叫ぶものや「そんなニュース知らない」と言う者も

私に関係している人はほとんど死んだ。
母は弟の前で自殺をし同居している彼氏は私が突き落とした。

後から知ったことだが弟は母の自殺に耐えれなく父のとこへ
父は小学校の先生をしていて、女子生徒を脱がしレイプ、地球消滅のカウントが止まったことを知り
女子生徒を殴り殺し、現場を息子に見られ、息子も殺していた。
父は慌てて学校から出て車に乗り一つ目の交差点で交通事故にあって即死したらしい。

"こんなことを誰かが言っていた"

ゲロみたいな料理でも"君が美味しい"って言えば高級料理。
どんなに映えてる料理でも咀嚼してしまえば変わらない。
胸に手を当て考える。
「生きるとは。凍てつく冬の夜、橋の下で寒さに震えるホームレスの老婆に買ったばかりのバーバリーのコートをかけることだ。」
「生きるとは。酒を飲みすぎた翌朝、満員の通勤電車で目の前に立った妊婦に何も言わずに席を譲ってやることだ。」

シャンパンをボッテガだとグラスに注がれ、そのままあたかも「わかってました」と言わんばかりに額を赤く染め見栄を張る事なんかじゃない。


生まれて初めて感じたワクワクも2分間で終了。
なんのためだれのために生きるのだろう。

そんな生き地獄が続くなら
私は私のために"死んでやる。"

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2019年4月3日。

私は死ななかった。たったの1分間の出来事で皆んな死んでったあの赤紫色をした景色を忘れられないでいた。
あの事件があった時私は28歳。
今はもお三十路を超え生きる意味や何か起こらないかなども考えることもやめた。
そんな中世の中は新年号発表の話題で持ちきりだった。
官房長官による新元号発表の予定時間だった
午前11時半を過ぎ11分遅れで発表された。

「新しい元号は『令和』であります」

ネットでは「令和」より「礼和」のほうがよかったのでは?と騒がれる中

首相は「春の訪れを告げ、見事に咲き誇る梅の花のように一人ひとりが明日への希望とともに、それぞれの花を大きく咲かせることができる、そうした日本でありたいとの願いを込め、決定した」

「人々が美しく心を寄せ合う中で文化が生まれ育つという意味が込められている」と対談で話されていた。


「人々が美しく心を寄せ合うねぇ。。」


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2019年4月19日。

私はいつも通り仕事にいかずTwitterを見ていた。そんな中あるツイートを見て何かを感じた。

"誰か都内で野菜手押しできませんか?"

私は最近流行りのUberEatsか何かかと思った。しかし「手押し」という表現に何か感じ
ハッシュタグをつけ検索してみた。

《「#野菜」「#手押し」検索。》

すると写真が出てきた。
私は大学の時市販の薬でOD(オーバードーズ)をしてた時期があり、ネットで合法トリップのスレを見てた時、偶に同じような写真が出てきたことがあったからすぐに悟った。

「薬物...じゃん。」

野菜というのは大麻、手押しというのは手渡しSNSを通しての密売のことだ。

当時、私は病んでて薬で楽になる日々を過ごしてて、自傷行為の傷はたくさん。未遂で終わったが自殺にも手を出したこともある。
とにかく逃げたくてとびたくて。
ただ薬物はなかった。とても興味はあった。
「体験することのない快楽を...」と思うと使用した事もないのに、まるで依存者かのように身体が欲して震えて苦しくて。
病名を付けるとするならば「薬物"欲"依存症」とでもつけれるほど、当時の私には頼りどこもなく、酒に浸り紛らわし彼氏と幾つもの夜を超え、溺れる毎日だった。買えるものならすぐにでも欲する身体に与えてあげたかった。
というのも薬物と言ってもたくさん種類もあり大麻や覚せい剤などは比較的手に入りやすいのだが私には全く興味がわかなかった。
私が欲してほしてたまらなかったのはLSD。幻覚剤。
大麻や覚せい剤と違いLSDは希少価値が高く金を出せば買えるような物じゃなかったから
当時諦めたあの感情が頭をよぎる。
その瞬間あの死のうと思った日からずっとモヤモヤしてたものが私の中からとんでいき赤紫色をしたあの光景が目に浮かんだ。
それと同時にあの時の興奮が込み上がっていた。
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2019年4月20日。

私はネットであらゆる情報を調べてる間に朝になったことに気づかなかった。
調べてわかった事がある。
そもそも日本では1970年に麻薬に指定されたLSD
昔と比べて今は比較的手に入りやすくその点警察の目も厳しくLSDにも隠語が使われてるみたいで「紙」などと言うらしい...。

「うん。ダメだよね。でも一回だけ...」

手は動く自分の感情とは逆らって、私の体が欲しがって...。

気がついた時には既に連絡を取り合っていて
良さそうな人のプロフィールを見てテレグラムのIDを覚え検索し、テレグラムでやり取りをしていた。

ふと我に返る。
「あれ。誰この人...。

自分は....LSD。幻覚剤。
LSD、LSD、LSD。。。

これで私は変わるんだ...!!!
でも私いつの間にこんな人と。」




「こんばんは!
Twitterからなんですけど、合ってますか?」



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「紙を都内で手押ししてほしいんですけど」

「申し訳ございません。。
現状、紙の取り扱いはございません。。」



「あぁ。そうですか。また検討します。」

短いやり取りが終わった。もお外は既に暗くなっていた。
「こんなにも簡単にやりとり出来るんだ。
けどなかったなぁ。」

表向きは主婦や学生、サラリーマン
一般の人にはわからないであろう隠語でやり取りをする闇の世界の人。
あなたの周りにもきっといるよ。
私がそうだもん。

____________________
2019年5月1日。
新年号のカウントをしている中、売人と会っていた。

「あ、あの。テレグラムの人ですか?」
「お、◯◯ちゃん?」
「はい、そうです。持ってきてくれました?」
「持ってきたよ、金持ってる?」
「はい!」

カバンから財布を出しお札を見せたと同時に相手はポケットから小さな入れ物を取り出し
お金を渡すと私のカバンに放り入れ
「またお願いな」と気さくに手を振ってその場を去っていった。

私の感情を自分自身整理した。
怖い?怖くない。
楽しみ?いや違う。
心臓は?落ち着いてる。

私は昔から望んだ物が手に入った事よりも売人から薬物を買った事よりも、「これがこの値段!?」って冷静に考えれるほどに落ち着いていた。

市販の薬でODして摂取量・使用頻度、共に多くごく一般的な使用方法だと半年くらい持つ量を数日で摂取してた頃でも高いと感じていたのが安く感じる。

「まあ、一回きりだし。もおやめるし。ってかまだ使ってないもん...使わないも..n。」

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「...!」
あれは股の間から私を押し出した女と
私を押し出した女に私を植え付けた男。
それに私に種を植え付け音信不通になった男。

私を自殺に追い込んだお前たち。


ーーー16歳の時ーーー

「日常的に飲んでる薬は役に立ってるんですけど急にくるパニックに対処出来なくて飲んじゃうんです」って言ったら「知りません。関係ないです。飲まないでください」って言われた。意味わかんないよ。。」
先生
「パニックになっても薬は決まった量を飲んでください。でもパニックの治し方は知りません。」
カウンセリング
「過去の記憶を消しましょう!消し方はわかりません」
ママ
「早く死んで」





「ママ。私が学校に行く前に眠剤1シートお酒で飲んでガクガクしながら学校に向かって死んだように寝て現実逃避して苦しんでたり
ピル飲みたいって言ったらクソみたいに怒ってピル飲むんとゴムつけんの避妊の何が違うん?大丈夫死ぬから。」

「パパ。私を意味もなく殴ってたよね。なんで愛されないの?なんで殴られるの?」

「久しぶり。私を犯して妊娠させて音信不通。わたしがママなんだよ。。
んでもね!三つ編みが似合うって言われて嬉しかったんだよ。なんで捨てたの。」

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「何なのこの世界。
もうバグってるバグってるバグこれはバグ...。」

「あれ明日仕事だっけ。虚無すぎる。
行かなくていいかなはまだいいけど
行ってからやらなくていいかなって思うと本当にキツイ。そろそろ社長にペットの世話が忙しいって伝えなきゃ。」

「なににもまけないもん」

「身長気にしすぎてぺったんこの靴ダサすぎ無理ヒール履いて走り回ってやる。」

「ごめんね自分」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
2019年5月2日。

「今日のニュースをお伝えします。
昨夜〇〇線のホームの駅から三つ編みをした女子高生の遺体が発見されました。
未だに身元確認が取れてなく
遺体付近には女子高生が書いたと思われる遺書のようなものには
「私、実は幽霊なんだけど第六感で抱きしめて欲しい」
と書かれており飛び込み自殺として警察は調査を進めています。以上今日のニュースでした。」
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