起たたない御曹司君の恋人は魔女

「すげぇ金持ってるなお前。もしかして、母親の遺産か? 」

 と言って、男は札束を引き抜いた。


 リラはニヤリと笑った。


「これは俺がもらってゆく。金がなくて困っていたからな」


 リラがスッと視線を落とすと・・・。


「そこまでだ! 」


 ん? と、男は振り向いた。


 すると男の後ろに数名の警察官がいた。


「ゲッ、何で察がいるんだ? 」


 警察官達は男を取り押さえた。


「麻中田浩二(まじゅた・こうじ)。窃盗罪で現行犯逮捕する! 」

 と、警察官は男に手錠をかけた。

「ちょ、ちょっと待て! なんで窃盗なんだ? こいつは、俺の親戚だぜ」


 リラはフッと笑った。


「バカね、私がただ言いなりになっていると思っていた? 」

「何? 」


「残念だけど私。まだ、検察官を辞めたわけじゃないわ」

「はぁ? 何だと? 」

「そろそろ、お金が尽きて。あんたが私を探し出す事は、想定していた事。だから、ちょっと連絡したんじゃない。それに、まんまとやって来たのはあんたよ」

「なんだと? お前、俺をハメたのか?  」

「さぁ、後は署で聞いてもらえば? 」


 警察官達は男を連れて行った。


 リラはやれやれと、ため息をつき、胸元に隠していた携帯電話を取り出した。


 携帯電話は通話中だった。


 リラは通話を切断した。


「お母さん・・・あの家は、取り戻すから・・・」


 リラはそのまま歩いて行った。





 その様子を、隠れて見ていた良人がいた。


「あいつ・・・検察官だったのかよ・・・。すげぇの見ちゃったぜ・・・」


 驚いた顔をしている良人。


 リラは良人に気付かず去って行った。

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