起たたない御曹司君の恋人は魔女


 その夜。


 結沙は特にリラに深い事を聞き出そうとはしなかった。

 ただ・・・今日見た事は誤解であり、あの女の人は幼馴染で取引先の社長の娘で、ずっと告白されているが断っている。
 だがあきらめきれずと、時々、無理やり抱き着いて来たり迫ってくるときがあって困っている事。
 あまりしつこい事が多く、そろそろ出入り禁止にしようかと結人と相談していたところである事を説明した。


 リラは素直に信じてくれた。


 すっと、どこか固かったリラの表情が少しだけ柔らかくなったのを結沙は感じた。



 そんな結沙に、リラは鞄から手帳を取り出して中を開いて見せた。


「これが・・・私の本当の名前です・・・」

 その手帳は、リラが検察官である証明手帳であり、名前は東條(とうじょう)イディスと書かれていて、リラが綺麗なブロンドの長い髪の写真も貼られていた。


 その手帳を見て、ブロンドの髪のリラを見ると、結沙はあの事故の時すれ違った女性を思いだした。

 帽子を深くかぶっていたが、あの女性は・・・リラだと、確信した。

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