起たたない御曹司君の恋人は魔女
 
 リラは総有総合病院に運ばれた。

 命の別状はないが、首に絞められた跡が残ってしまい、数週間は完治までかかると診断された。

 病院を出て警察で事情徴収を受けていたリラ。


 ようやく解放されたのは、すっかり夜になっていた。




 
 首に包帯を巻いてリラが警察署から出て来た。


 夜になると冷え込んできたが、リラはカーティガンは羽織っているがとても寒そうである。




「やぁ、大丈夫? 」

 警察署の外で結沙が待っていた。


 リラは黙ったまま俯いた。


「突然現れてごめんね。今日、たまたま総有市に用があって。帰り道で、君を見かけたんだ。なんだか、様子がおかしくて。この前の事もあったから、こっそり後をつけたんだ。そうしたら、営業部長と話していたから。これはヤバいって思って、警察に通報したんだ。間に合ってよかったよ」


 リラは長い前髪をちょっとだけかき上げて結沙を見た。


「・・・嘘・・・」

「え? 」


「ずっと、着けてきていたんでしょう? 私の事」

「なんで? 」


 リラはじっと結沙を見つめている。


「・・・判るの、嘘ついても。私・・・魔女だから・・・」


 リラはフイッと、少しだけ顔を背けた。


「・・・嘘つかれても・・・心の声が聞こえるから・・・」


 ヒューッと冷たい風が吹いてきた。
< 70 / 84 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop