Before dawn〜夜明け前〜
「この十年。
電話して声を聞けば会いたくなる。
会えば離れたくなくなる。
わかってた。
わかってたけど、淋しかった」
いぶきは、拓人の胸に顔を埋める。
拓人は優しく、いぶきの頭をなでてくれた。
「あの丹下くんだって会いに来てくれたのよ。奥さん連れて。
高校卒業してすぐ結婚だなんて、丹下くんには相変わらず驚かされた。
でも、幸せそうな二人がうらやましかったよ。
丹下くん、アメリカに出張で来た時は必ず連絡くれてね、黒川と朝まで3人で飲むのよ。
もっぱら、拓人の話で盛り上がってたわ」
「俺がいないところで、どんな話してたんだ?」
「数々の拓人の武勇伝よ。
どうせ、黒川が日本に行った時は、同じように私のことをサカナに飲んだりしてたんでしょ?」
「ハハ、そうだな」
拓人は笑っていぶきを抱き寄せた。
「あぁ、拓人のにおいだ。
夢じゃない。
…会いたかった」
「俺も。会いたかった。
でも、出来なかった。俺は、いぶきと一緒にいる為にはまだ役不足だと。
でも、会えた。
だから、もう、待つのはやめる。
俺にはやっぱりいぶきが必要だから。
桜木さんにお願いするよ。
アメリカと日本。離れていても、もう、離したくない」
「拓人…。
私も、もう、離れたくない。
弁護士としても役に立ちたい。
…一緒に戦うわ」
本当は、ずっと想っていた。
いくら押し殺しても溢れ出す想いは、行き場を求め、胸を締め付けた。この十年。丹下や黒川から拓人の話を聞いた時や、何かの拍子に不意に彼を思い出しては襲われる喪失感に、幾度も泣いた。
「まさか、いぶきがNYでもトップクラスのジェファーソン法律事務所にいるなんて、驚いたよ。
そのいぶきが一緒に戦ってくれるなら、俺に怖いものはない。
よし、やるぞ。もう、御曹司やらボンなんて言わせない」
拓人の目が輝いている。
先程までの疲れなど、どこかへ吹き飛んだように、体から力が込み上げていた。
電話して声を聞けば会いたくなる。
会えば離れたくなくなる。
わかってた。
わかってたけど、淋しかった」
いぶきは、拓人の胸に顔を埋める。
拓人は優しく、いぶきの頭をなでてくれた。
「あの丹下くんだって会いに来てくれたのよ。奥さん連れて。
高校卒業してすぐ結婚だなんて、丹下くんには相変わらず驚かされた。
でも、幸せそうな二人がうらやましかったよ。
丹下くん、アメリカに出張で来た時は必ず連絡くれてね、黒川と朝まで3人で飲むのよ。
もっぱら、拓人の話で盛り上がってたわ」
「俺がいないところで、どんな話してたんだ?」
「数々の拓人の武勇伝よ。
どうせ、黒川が日本に行った時は、同じように私のことをサカナに飲んだりしてたんでしょ?」
「ハハ、そうだな」
拓人は笑っていぶきを抱き寄せた。
「あぁ、拓人のにおいだ。
夢じゃない。
…会いたかった」
「俺も。会いたかった。
でも、出来なかった。俺は、いぶきと一緒にいる為にはまだ役不足だと。
でも、会えた。
だから、もう、待つのはやめる。
俺にはやっぱりいぶきが必要だから。
桜木さんにお願いするよ。
アメリカと日本。離れていても、もう、離したくない」
「拓人…。
私も、もう、離れたくない。
弁護士としても役に立ちたい。
…一緒に戦うわ」
本当は、ずっと想っていた。
いくら押し殺しても溢れ出す想いは、行き場を求め、胸を締め付けた。この十年。丹下や黒川から拓人の話を聞いた時や、何かの拍子に不意に彼を思い出しては襲われる喪失感に、幾度も泣いた。
「まさか、いぶきがNYでもトップクラスのジェファーソン法律事務所にいるなんて、驚いたよ。
そのいぶきが一緒に戦ってくれるなら、俺に怖いものはない。
よし、やるぞ。もう、御曹司やらボンなんて言わせない」
拓人の目が輝いている。
先程までの疲れなど、どこかへ吹き飛んだように、体から力が込み上げていた。