俺様課長のお気に入り
それからというもの、編み物漬けの日々が始まった。
要君も、室内でできる趣味だからちょうどいいって、大歓迎している。
必要な材料は、ネットで自由に買っていいとも言ってくれた。
元来、凝り性な私は、編み物の世界にどんどん浸っていった。


とりあえず、赤ちゃんの帽子を作った。
なかなかの出来栄えに、要君も褒めてくれた。

「陽菜は料理もうまいし、手先が器用なんだな」

褒められると悪い気はしない。
いや、いい気しかしない。
浮かれた私は、さらに編み物にのめり込んだ。
なんせ、時間だけはたくさんあったから。
気付けば、材料も道具もたくさんそろっていた。

赤ちゃん用に、ミトンとベストも編んだ。
さすがに性別がまだ不明だったから、赤ちゃんの物はこれでストップ。

季節は初夏というのに、エアコンの効いた部屋で、新しく届いた毛糸を手に、ホクホクしていた。

次は自分の物。
秋冬に使う毛糸の靴下を数枚と、マフラーを作った。
ついでに、ケイ君にも、着てくれるかどうかわからなかったけど、犬用の服を作った。


「要君、見て見て!自分の靴下を作ったの!」

「おぉ。すごいじゃん。でも、外の暑さを毎日実感させられてる俺からしたら、毛糸はまだ見たくないな」

と、毎日毛糸の作品を見せられる要君が、若干及び腰になってきた。
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