哀夢
大分と宮崎へ…
 18歳になると、派遣社員の仕事に付きたいと、大分の工場で、寮生活を始めた。初めての一人暮らしに、心躍るわたしは、お酒を買って、毎日のように、友達と飲み会を開いた。

 出会い系サイトの利用も健在で、友達と一緒に約束を取り付けた。…が、ヤバイおっさんに会うと、友達は理由をつけて逃げた。

わたしは、精神科にかかっていることを話し、
「無理やりなんかしたら、過呼吸起きるけやめてね。」
と、忠告してやったのに、おっさんは無理やりコトをしようとしてきて、わたしは過呼吸を起こして気を失った。

次に気が付くと、おっさんの車の中だった。おっさんは、
「本当やったんやね。ごめん。」
と謝ってきた。そして、奥さんと別れたばかりで、ヤケになっていたことを話してきた。

 更には、自分の家に連れて行き、元嫁の置いていった荷物から好きなのを持っていっていいと言われた。わたしは、気が進まなかったが、使えそうなものをいくつかもらってあげた。

おっさんは少しかわいそうだった。その後は、わたしの家まで送ってくれた。

 派遣の仕事が一ヶ月を過ぎる頃、ナンパしてきた男達と3対3の合コンをすることになった。会場は案の定わたしの部屋だった。
わたしは盛り上げ役だったので、ひたすら周りに気を配っていた。そんなわたしに、林将大(はやしまさひろ)通称まっちゃんが、連絡先を聞いてきた。

わたしは、皆のお世話でてんやわんやしながら、まっちゃんに連絡先を教えた。

「それじゃ、またねー!」
「また連絡すんね!」
「おつかれー!」

お開きになり、わたしも床につく。
朝目覚めると、まっちゃんから電話。

「もしもーし」
「もしもし…愁ちゃん?」
「そーだよ。まっちゃん…朝早い。」
「ごめん!今度は愁ちゃんと2人で会いたいなぁ…って……。ごめん!ほんと朝から……おれ、焦っちゃって…。」
「いや、いいんやけどね。あたしも、まっちゃん気になってたし…。」

何度かデートしたら、まっちゃんが、真剣な顔で切り出した。
「愁ちゃん、実はおれ、隠してたことが……」
「何?」
わたしは怪訝な顔になる。
嘘は嫌いだ。

「おれの仕事、何と思ってる?」
「何かの工場の専務さんでしょ?始めに言ってたやん!………違うん?」
「実はおれ、社長の息子なんやん……で、長男やけ、将来的には継がないかん。」
「なんだ!そんなこと!……ビビらせんでよ!」
「やっぱ愁ちゃんと付き合って良かった!」
「なんで?」
「いろいろ彼女にしたい子おったけど、おれの肩書きに寄ってくる子ばっかで…。」
「あーね、だから…。気にしないよ!まっちゃんはまっちゃんやん!」

 リスカがひどくなり、仕事を辞めて、帰ると言うと、彼は、自分の家に連れて行き、わたしは隠れて数日間を過ごした。

 その間に、彼は婚約指輪と言って、3万円の指輪をくれた。

 私が帰る時は、
「できるだけ、会いに行く!」
と言ってくれた。

 わたしは遠距離恋愛はムリな人だったので、ヤバイなぁ…と思いながら、電車に乗った。
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