哀夢

最後の恋

 着く直前に、化粧を直す。

 よし、完璧!

 ギャル男にあわせて思いっきりギャルっぽくして待っていると………ん?………この人だよね?
 そこには茶髪の優しそうなお兄ちゃん…。

 わたしは気持ち拍子抜け…

 彼の以前働いていた居酒屋に行き、話をしながら酒と料理を頬張る。何の仕事をしているのかとか、他愛もない話をしながら小一時間ほどしたところで、彼は
「そろそろ送ろうか!」
と、席を立つ。

 わたしは帰りたくない気持ちでいっぱいのまま、彼に続いた。

 車に乗り込むと、わたしは帰りの道すがら、自分が精神科にかかっていることや、家の事情、いじめられていたこと、泣くことができなくなっていることなどを話し、まだ帰りたくないと言った。

 また、体の関係になるんだろうなぁ…

と、軽い落胆をしていたが、彼はキスさえしてこなかった。

広がる安心感………

この人がほしい!

初めての感情だった。

 わたしは、朝方に寒いと言って、彼の上着を借りた。
 そして、忘れたふりをして来たまま帰る。彼の香水の香りの残る上着が嬉しかった。

プルルル プルルル

彼の声
「もしもし…どした?」
「上着!来て帰っちゃった…。」

わたしは申し訳無さそうに言ってみる。

「次会ったとき返して…それまでは着てていいよ!」

やった!

わたしは、内心喜んだ。また会える。次がある!!


『ねえ、好きになっちゃった!あたしと付き合って!』
『そういう話は会ってからしよう!』
『なんで?あたしのこと嫌い?』
『違う!そうじゃなくて…。んー…なんて言ったらいいのかなぁ…。』
『わかった。』

わたしは少し落ち込む。
つまんないのー!…と思いながらベッドに潜り込む…と、
早々に眠りに落ちた。

目覚めたのは昼過ぎだった。
携帯を確認する。

『おはよー!…寝てた。』

彼にメールを送ってみる。

『おはよう。さっきの話なんやけど、やっぱ付き合おうか!』

わたしは喜びで、笑顔がこぼれる。

『マジ?やった!んじゃ、今日も行っていー?』
『うん。でも、お金大丈夫?』
『平気!んじゃ、いつ行ったらいい?』
『じゃぁ、昨日と同じくらいの時間で…。』

彼と約束を取り付け、ごきげんで階下に下りる。
母に
「彼氏できたけ、今夜もデート行ってくるね!」
とだけ言うと、母は、お金を渡してこう言った。
「あんまり迷惑かけんのよ!」

父には、
「智の電話番号だけは、消すんじゃないぞ!」
と言われた。

わたしは、
「はーい。」
と生返事を返して、
「じゃあ、行ってきまーす!」
と、家を出た。


ここから後は、また別の話。
彼はわたしの旦那様になり、結婚してからも振り回し、振り回され、いろいろありましたが、それはまた、別の機会にお話します。

とりあえずは、10代の頃の若気の至りをざっくりと…。
では、また次のお話で会いましょう。



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