蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
 黙っていると泣いてしまいそうなので、私はとりとめなく喋り続けた。


「今まで一度もこんな目に遭ったことがないんです。色気がないのも便利ですよね、あはは」

「自覚持てよ」

「なんの?」

「わからないなら、いい」


 蓮司さんは溜息をついたあと、ぐっと優しい声になった。


「大丈夫か?」

「はい」


 私が珍しく素直に頷くと、彼は私の頭に腕を伸ばしかけ、思い直したようにその腕を下ろした。


「今は男が怖いよな」


 頭を撫でてくれるのかと思ったのに……。
 動揺しているせいなのか、彼に撫でられたいなと思ってしまった。昨夜みたいにしっかり抱き締められたい、と。こんな被害に遭ったばかりなのに、彼にだけはそうしてほしいと願うのだ。

 そんな風に感じる自分に戸惑う。嫌いな男のはずなのに、なぜ触れられたいと思うのだろう?


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