通信制の恋

出会いは一目惚れ

春。

色んなものが始まりを迎えるこの季節。

私は少しだけ苦手な季節でもある。


「結ー、用意したー？」


「はーい！」


二階建ての一軒家。
その一階から声を掛けてきた母親に返事をして、姿見鏡を見て、くるりと一回転。

「うん、よし！普通！」

なんの確認かと思われるかもしれないが、これも大事な確認の１つ。

"普通"であるということ。

これが案外大事で継続していくことが目標である。


なんちゃってな制服に身を包み、階段を駆け下りるとしたくをすませた母親が玄関で既に靴を履いて待っていた。


「遅刻したらどうするの」


「そんなまだ1時間も前だよ…」

「備えあれば憂いなし、よ。」


うちの家訓でもある"備えあれば憂いなし"。
これは亡くなった父の口癖でもあったため、いつしか家族に伝染し、母も私もその言葉を使うようになってしまった。


と、そんな話をしてる場合ではない。

そろそろ向かわなければならない。


「(私の新しい学校へ…！)」