通信制の恋
熱さと冷たさ
じりじりと照りつける太陽の中、私は日陰を求めた結果駅の出入り口付近にとどまることにした。



「あっつい…」


「おーい!結ーッ!」


「あ、杏樹ちゃん!」


駅のホームの方からやってきた杏樹ちゃんに私も汗を拭く手が止まった。


「今日もあっついねー」


「うんうん。最高気温35度超えらしいよ」


「うひゃー、それは酷だわ…、今日は水族館で良かったわ…」


「それじゃあ、行こっか」


私達は無事前期試験を終え、夏休みに入った。


だが、夏休みにも学校の行事があり、今回は総合学習の一環として水族館への見学に来ていた。

今日はバックヤードの見学などもさせてくれるそうで、私は前日からこのイベントを楽しみにしていた。


水族館は元々好きなのだが、それとは別に今日を楽しみにしていた理由がある。


「あ、もう天野くんいるよ!…おーい!お二人さーん!」


「あ、待って杏樹ちゃん!」


水族館が見えてくると、水族館の入り口に立つ直と友達の東雲くんに杏樹ちゃんが先に気付き、手を振った。


だが、違和感がある。いや、違和感と言うべきか、直と東雲くんの周りには何故か人混みができていた。


なんとか、手を上げて答えてくれた東雲くんの様子は視認出来たのだが、今日楽しみにしていた理由の1つである、直の存在が見えないのである。


「あちゃー、もう人混みになってるや…。恐るべし、天野くんパワー…」


「世の中の女性が直を放って置くわけ無いよね…」


2人で水族館前の横断歩道で立ち止まっている先には直と東雲くん目当てであろう人混みが出来上がっていた。


そのため、私たちは人混みから少し離れた場所で集合時刻を待った。

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