香とビターチョコレート
EP,1【 あ な た に 会 え る こ と 】

学校が終わり、駆け足で家に帰る。息を切らしながら玄関に飛び込めば、2階に上がっていった。今日は水曜日。あなたに会える日。学校の制服から、私服に着替えば、いつものリュックを背負い、1階にあるリビングに顔を出す。

『お母さん、行ってくるね。』

母「あまり遅くならないように気をつけてね。」

私は靴を履き、家を出た。自転車の鍵を指す。漕ぎ出せば春風に髪がなびき、黒い髪から少し赤色の髪が現れた。春風に身を任せ、自転車をこいでいく。坂道にさしかかれば、スピードが出てとても気持ちよかった。

近くの駐輪場につき、二階の指定された場所に自転車をとめた。しっかりと鍵をかけ階段を降りれば、隣にある建物の扉を開けた。 いつも通りスマホを受付に預け、仕切りの奥の部屋に入っていくと会いたかったあなたの姿があった。

暁「九ノ瀬、今日来たんだね。」

『暁先輩も今日来てたんですね。私は今日英語の授業があったので。』

入口近くでタバコを吸っていたらしいあなたが私に声をかけた。
私の名前は、九ノ瀬 玲 (ココノセ レイ)。高一で暁先輩のことが好きだ。暁先輩は、私の先生。下の名前は優詩 (ユウタ) と言うらしい。ここは麗旺学院 (レイオウガクイン)。私が中3の春から通っている小さな塾だ。前は世間で言う、進学塾というものに通っていた。だが、嫌になって中2の時にやめてしまった。そこから勉強を一切しなくなってしまい、さすがに成績が危うくなってきて、友達に誘われ、この塾に通うようになった。ここは居心地がよかった。教えてくれる先生のことを先生と読んだことは無い。先輩と呼ぶか、あだ名で呼ぶか、生徒はみんな自由に呼んでいる。そんなフレンドリーな塾だ。

奥で座り、パソコンをいじっている人に声をかける。

『しゃちょー、きたよー!』

社「お前はまたこっちに入ってきて!!」

『いいじゃん別に!』

そう言いながら、いつもの定位置に座り、暁先輩を眺めた。相変わらず絵になるな、。そう思いながら、私は声をかけたのだった。

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