きみのための星になりたい。

「凪には話したことなかったね。私、悠真(ゆうま)っていう幼なじみがいるの。小学校四年生に上がるときに違う街へ転校しちゃって、それからは連絡を取ることはなかったんだけどね。その幼なじみが高校へ入学すると同時にこっちにまた引っ越してきてて、お母さん伝いにそれを知ってからは、数回連絡を取ったり、家族ぐるみで会ったりしてるんだ」

あかりから幼なじみの話なんて聞くことがなかったから、少し驚いた。けれど、その人が高校に入ってこの街へ戻ってくるまでは全く付き合いがなかったのなら、あかりからその話を聞くことがなくても別に不自然ではない。

「……で、その悠真さんから塾に誘われたってことだね」

私の言葉にあかりは小さく頷く。

「悠真の通ってる塾、私たちの最寄り駅の目の前にあるところなんだよね。教室で開かれる講座を受ける感じで気楽に受けられるからすごく勉強しやすいって」
「へぇ、そんな塾があるんだ」
「うん。……でね、そこに凪も一緒に行かないかなあって。というか、私が凪についてきてほしいの。やっぱり幼なじみがいるとはいえ、心細いし……」

そう言うあかりの顔は、本当に少し寂しそうで。

……私も別に塾に行くことが嫌なわけではないし、確かに大学合格を目指すなら塾へ行った方がいいと思う。私からすれば悪い話ではないし、私の方こそあかりが一緒に行ってくれるなら安心だ。

……けれど。もともと自分に自信がなく弱気な私は、あかりは本当に私でいいのかと考えてしまう。あかりには私と違って、大勢の友達がいる。それでも私を選んでくれたのは、どうしてなのだろう。

なんて、そんなこと、自分の意見を口に出すことがあまり得意ではない私には聞けないんだけれど。

「いいよ、一緒に行こう」
「え、いいの!?」

ぐるぐると考えてから出した私の返答に、これでもかと目を見開いて驚くあかり。でもその顔は心なしかすごく嬉しそう。

「うん。でも、とりあえずお母さんに聞いてみてからでいい?お金のこともあるだろうし」

そう言えば、あかりは「もちろん、それは全然お母さんに聞いてからで大丈夫だよ」と大きく頷いてくれた。

その日の夕方、家へ帰宅してから早速お母さんにあかりが誘ってくれた塾の話をもちかけると、お母さんはすぐに了承してくれて。

こうして私とあかりは、あかりの幼なじみの悠真さんが通っているという塾に通うことになった。
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