きみのための星になりたい。


そうしたら悠真さんが吹き出すように笑い、きゅるりと目尻を下げた。

「あかりから人見知りって聞いてたけど、本当にそうみたいだな。でもそんな緊張しないで。俺ら同い年なんだし、気軽に行こうぜ」
「……はい」
「あ、ほら、敬語禁止。俺のことも、悠真でいいから」
「……分かった。悠真くん、ね」

男の子とこうして面と向かって話すことなんてほとんどなかったから、思いのほかグイグイとこられ、少し動揺してしまった。

けれど、私にはこれくらい積極的に話しかけてくれる人の方がいいのかもしれない。これ以上何を話していいのか分からなかった私は、ただにこにこと笑みを保つ。

「あかりと凪ちゃん、ここに座ったら?あと十分くらいしたら先生もくるだろうし」

悠真くんは立ったままの私とあかりを見て、自分が使っている机の後ろの席を指差す。

この教室には長机が六つ設置されていて、ひとつの長机の前に二人座れるようになっている。悠真くんの隣にはもうひとり男の子が座っていて、悠真くんは自分たちの後ろの開いている席を案内してくれたのだ。

「わかった。私と凪はここに座らせてもらうね」

にこりと笑ったあかりは、悠真くんの後ろの席へ腰掛ける。それに続くように、私はあかりの隣へ腰を下ろした。

「ああ、やっぱり初めは緊張するね」
「うん、そうだね。結構難しい問題とかでるのかなあ。答えられなかったらどうしよう」

これから始まる授業についていけるのだろうか、という不安もあり、小声であかりとそんな話をする。そしたらその話が聞こえていたのだろう。悠真くんがこちらを振り向いて、にかっと歯を見せた。

「大丈夫。ここの先生はすごく優しいし、分からなくてもその問題がわかるまで丁寧に教えてくれるんだ。授業の時間内に理解できなかったとしても、後から個別に聞きに行けば指導してくれる。……な、柊斗(しゅうと)」

そう言って悠真くんは隣に座っていた男の子の肩をポンと叩いた。

……柊斗、と呼ばれた彼は、参考書からこちらへ目を移すと、「ああ」と小さく頷いた。私たちがここへきてから一度も悠真くんと話しているところを見なかったから、てっきり友達ではないのかと思っていたけれど、下の名前で呼んでいるところをみるとそうでもないみたい。

「柊斗くん?悠真の友達?」
「おう、高校に入って初めてできた友達なんだ。こいつめちゃくちゃいいやつだから、仲良くしてやってくれ」
「へぇ、そうなんだね。私あかり。よろしくね」

社交的なあかりは、彼に早速話しかけ、手を差し伸べている。彼はあかりの方に向くと、その手をそっと握った。
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