きみのための星になりたい。


そして再び言葉を続けた彼女。

「で、凪は緊張して、どうにもならなくて私に構って欲しかったんだ?」

冗談げに放たれたように聞こえるあかりの言葉たち。その声は、さっきと同じく、優しい音を奏でていた。あかりは、私の話を聞いただけで気付いていたんだ。なぜ私があかりに連絡をよこしたのか。

さすが私の親友。自然に凝り固まった頰が緩む。

「……正解」

なんだか悔しさも感じたけれど、ここは素直にお礼の一つでも言っておこう。

「ありがとう。あかりのおかげで、少しだけ緊張もほぐれたよ」
「それはよかった。私はいつだって、凪の役に立ちたいって思ってるんだから。前にも言ったでしょ?凪は我儘なくらいがちょうどいいんだよ。また困ったこととか聞いてほしいこととかあったら、すぐに言ってよね。いつでも付き合うから」
「……ふふっ、うん。ありがとう」
「こちらこそ。じゃあ、凪、今日はしっかり頑張ってくるんだよ。大丈夫。凪の言葉で、真っ直ぐに向き合えば。頑張れ、凪」

そう言ったあかりは、電話の向こうできっと微笑んでいる。あかりの表情は見えないけれど、声色から安易に想像することができた。

それから、またねと電話を切った私たち。さっきまで曇り模様だった私の顔は、少しだけ晴れ間がさしたようだ。気分も少しだけ軽くなり、清々しい。

部屋に掛けてある時計に目をやると、時刻は十二時前を差していた。

このまま家にいてもまた色々なことを考えてしまうかもしれないし、早めに柊斗との約束の場所に向かおうかなあ。景色をゆったりと眺めながら外を歩くのも、さらなる気分転換になりいいかもしれない。

……うん、決まりだ。少し早いけれど、家を出発して公園へ行こう。

私は手に持っていたスマートフォンををコトリと机に置き、身支度を整える。

今朝のニュースでお天気キャスターのお姉さんが、今日は晴れてはいるが気温は平年より少し低いと言っていたのを思い出し、シンプルなティーシャツに、薄手の七部丈のカーディガンを肩に羽織ることにした。

これならば、暑かったらカーディガンを肩から外せばいいし、少し肌寒さを感じたら元どおり羽織ればいい。

身支度を終えた後はそのまま一階へ降りると、お昼用にと朝握っておいたおにぎり二つを肩にかけていたトートバッグに入れる。

「行ってきます」

私以外誰もいない家だけれど、きちんと挨拶をしてから鍵をかけ、自宅を出発する。

……それにしても、確かに今日の気温は不思議だ。差し込む日差しは肌を焦がしそうなほどに熱いのに、吹き荒れる風や外気温は春や秋と変わらないように感じる。とても過ごしやすい気候だ。

それから間もなくして公園についた私は、コートのポケットに入れていたスマートフォンで時刻を確認する。どうやら現在は十二時二十分前だ。


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