MIYU~シングルマザー二十歳,もう一度恋します~
3・「パパ」と呼ばれる日
裕一との初デートの翌日,美優はアルバイトの帰りに銀行のATMに寄ったその足で,書店に立ち寄った。
下ろしてきたバイトの給料から,裕一の著書を購入する予定にしていたのだ。彼とも約束していたことだし。
彼の著者は文庫本だけだったが,四冊買ったら二千五百円余りもかかった。
「ふー,結構かかっちゃった。ムダ遣いになっちゃったかなあ」
日曜日に,春奈とどこへ行くのか,まだ行先を決めていない彼女はちょっと不安になった。お金,()りなくなったらどうしよう……?裕一さんの負担は増やしたくないし。
「でも,どれか一冊だけじゃ申し訳ないしなあ。読むなら,全部一通りは読んでみたいもんね」
日曜日までには,まだ四,五日ある。その間に,一冊くらいは読み終えられるだろう。明日は休みだし。
「……さて,春奈が待ってる。保育園までお迎えに行かなきゃね」
美優は四冊の文庫本が入っているビニール袋をトートバッグに押し込み,娘の待つ保育園を目指して歩き出した。
「――ねえ,春奈。今度の日曜日,ママとお出かけしよう。春奈はどこに行きたい?」
保育園からの帰り,いつものように母娘で仲良く手を繋いで歩きながら,美優は我が子に訊いた。
「えっ,おでかけ?やったあ!ハルたんね,どうぶつえんにいきたーい!」
たどたどしく,春奈は答える。
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