過ぎた時間は違っても
喫茶店の中は暫くテレビだけが喋っていた。お客も店員も皆、不安そうな表情で最新の情報を求めていた。
私は、羽李の手を握り締めていた。怖くて堪らなかった。また、死んでしまうんだと。また悲しませてしまうんだと辛くなってしまったんだ。何事も無く、事件が解決する事を願った。でも、私の願いは通じなかった。

「私・・・?」

「一人では行かせないよ。俺も行く」

テレビが言うには犯人は私を目の前に連れてきたら他の人質を解放するらしい。そして二人分の逃亡資金を集めろとの事だった。その二つさえ叶えば爆弾を爆発させないとの事。
手を繋がれていた事もあるのだろう。私は羽李と一緒に喫茶店から追い出されてしまった。明穂ちゃんは私が亡くなってしまうと勘違いして酷く泣いていた。
< 252 / 260 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop